IOAI2025 大会規則(日本語版)
本ドキュメントは、国際人工知能オリンピック(IOAI)2025 における競技の公式ルールをまとめたものです。競技は以下の全 3 種目で構成されます:
- 個人戦
- 団体戦
- GAITE コンテスト
- (注)GAITEコンテストは個人戦・団体戦とは別枠の競技であり、今年度日本からの派遣はないため、大会規則の記述は省略します。
この規則は、大会前に削除・不一致ならびに新しい情報を反映する改訂される可能性がありますが、形式が大きく変わることはありません。
チームリーダーは、チームメンバー全員にこれらの規則を理解・遵守させる責任を負います。
1. 一般的な要求事項
1.1 行動規範 (Code of Conduct)
宣誓 (OATH)
「私たち、国際人工知能オリンピックの選手は、責任をもって誠実に競技に参加し、フェアプレーの精神を遵守し、AI と倫理的に協力することを厳粛に誓います。人類の栄光と自国チームの名誉のために、私たちはここに誓います!」
尊重 (Respect)
IOAI に関わるすべての人は、多様性を尊重し、相互理解を促す環境づくりを目指して、互いに敬意と配慮を示さなければいけません。
誠実 (Integrity)
競技者はフェアプレーを徹底し、嘘や偽りを避け、誠実に競技へ取り組まなければいけません。
機密性 (Confidentiality)
機密情報、特に競技課題や解答は、競技の公平を保つために保護されなければいけません。
専門家精神 (Professionalism)
学問的探究の厳粛さを保ち、他の競技者や運営関係者への敬意を十分に示すためにも、常にフォーマルかつ礼節をわきまえてやり取りを行わなければいけません。
安全と福祉 (Safety and Welfare)
IOAI は安全な環境づくりに尽力しています。参加者の身体的・精神的健康を著しく害する行為は固く禁止されています。
規則の遵守 (Compliance with Rules)
大会の公式ルールを理解し、これを遵守することは参加者の義務です。ここでいうルールとは、競技規則や提出期限、その他大会期間中の行動規範などを指します。
不正行為の報告 (Reporting Misconduct)
競技の透明性はきわめて重要です。倫理に反する行為や規則違反を発見した場合は、公平性と説明責任を確保するために、速やかに報告しなければいけません。
規則の施行 (Enforcement)
IOAI はこの規則を厳格に施行します。違反行為が確認された場合には、失格や今後の参加禁止などの罰則が科されることがあります。
2. 個人戦
個人戦の競技中、各国の代表選手はそれぞれ別のコンピュータを使用し、選手同士のコミュニケーションは禁止されています。競技の結果は選手ごとに集計され、メダルも選手ごとに与えられることに注意してください。
なお、個人戦の課題は 「IOAI シラバス」(当委員会による日本語訳)に基づいて設計されています。
2.1 競技の詳細
- At-home コンテスト (At-home Contest)
- IOAI2025 開催の約1カ月前に、各チームに3つの課題が与えられます。これらの問題は教育目的に作成されたものであり、競技の結果には影響しません。
- 練習セッション (Practice Session)
- 選手が競技会場やシステムに慣れるために、個人戦1の前に2時間の練習セッションが行われます。このセッションは競技の結果には影響しません。
- 個人戦1 (Individual Contest 1)
- At-home コンテストの内容の延長・発展となる問題が3問出題されます。制限時間は6時間です。
- 個人戦2 (Individual Contest 2)
- At-home コンテストの内容とは異なる、新しい種類の問題が2~3問出題されます。制限時間は6時間です。
2.2 競技環境
- 競技期間中、すべての選手は同一仕様のローカルマシンにアクセスすることができますが、多少の技術的な差異が生じる可能性があります。
- 競技課題は、以下の内容(およびこれらに限定されない他の内容)を含む可能性があります:
- ソースコードの作成
- 訓練データへのモデルのフィッティング
- 訓練済みモデルを用いた推論
- 競技期間中、すべての選手は、同一仕様の GPUリソース(RAM は最低 24GB 以上)を使用することができます。
- 選手は、 Bohrium プラットフォームにて、課題内容やデータセットの入手、解答の提出、得点の確認を行うことができます。
- Bohrium 上では Web 版の Jupyter notebook を使用することができます。このノートブックから GPU を使用することができます。
- その他、以下のローカル環境で動作するエディタを使用することもできます:VSCode、Vim、PyCharm。
- 選手は、Bohrium 上で GPT-4o(あるいは競技前に発表された最新のバージョン)を使用できます。これ以外の LLM ベースのチャットボット、AI コード作成支援ツール、および Copilot などの使用は禁止されています。
- 選手は、以下の Web サイトに限りインターネットへのアクセスが認められています。ただし、これらのサイトにログインして質問を投稿するなど、外部の人間とコミュニケーションを取る行為は禁止されています。
- stackoverflow.com
- scikit-learn.org
- pytorch.org
- huggingface.co
- numpy.org
- github.com
- python.org
- pypi.org
- 検索サイト(検索結果は上記の Web サイトのみ)
- (注)開催国が中国であるため Google などの Web サイトの使用が制限される可能性があります。
- 翻訳サイト
- 各課題ごとに、選手はソースコード、訓練済みモデル、モデルの推論結果(あるいはいずれか複数)を提出するよう求められる場合があります。コンテスト終了後に追加でモデルを訓練することは認められていません。
- 課題での指定がない限り、訓練済みモデルや追加のデータセットを使用することはできません。
- 下記の内容の申請を希望する場合、このフォームを使用してください(フォームの送信は2025年6月30日までに行ってください)。
- 選手が使用するマシンに追加でインストールするエディタ
- ホワイトリスト(閲覧できる Web サイトのリスト)に追加する Web サイト
- 英語から使用言語へ翻訳する際に用いる Web 上のプラットフォーム
- 利用可能な Web サイト、エディタ、検索エンジン、翻訳システム、その他のツールは、競技前に改めて発表されます。
2.3 翻訳
- 各コンテスト開始の2時間前に、チームリーダーによる翻訳セッションが行われます。このセッションでは、チームリーダーが、英語で書かれた課題とそれを各チームの使用言語に機械翻訳された課題を受け取ります。チームリーダーはこの翻訳が適切かどうか確認し、必要に応じて修正を行います。
- 複数のチームが同一の言語を使用する場合、これらのチームのリーダー同士は翻訳セッション中に協力することができます。
- すべての言語で書かれた課題は、英語版のものと同じ内容でなければいけません。ヒントや追加情報の追記は認められません。
- 翻訳セッション中、チームリーダーは課題の内容を極めて機密性の高いものとして扱わなければいけません。会場外の誰かと内容を議論したり、第三者に連絡したり、オンライン上に課題をアップロードすることは禁止されています。
- 競技期間中、選手は自分の使用言語と英語版の課題の両方を常に参照することができます。
- すべての言語の課題は、競技終了後に IOAI 公式 Web サイトにて公開されます。この時、上記の不正行為(ヒントの追記など)が発覚した場合、違反したチームにペナルティが科される可能性があります。
2.4 採点方法
- それぞれの課題はいくつかの小課題に分けられ、それぞれに部分点に与えられることがあります。
- それぞれの課題の満点は100点です。
- それぞれの課題の最終的な点数は、小課題の得点の合計を小数点以下2桁に丸めた値になります。
- 課題の問題文の中にベースラインモデルが与えられ、解答する上での基本的な指針やヒントになります。
- 各課題について、提出されたモデルのスコアは以下の式を用いて正規化されます:
Norm_Score = (Submission_Score - Min_Score) / (Max_Score - Min_Score) * 100
- Norm_Score - 正規化後の得点
- Submission_Score - 提出されたモデルのスコア
- Min_Score - ベースラインモデルのスコア
- Max_Score - 以下の2つの値のより大きいもの:
- 0.9 * SC_Solution - 運営委員会によってほぼ最適化されたスコアSC_Solutionの 0.9 倍
- Max_Submission - 全選手の提出したモデルのスコアの最大値
(例)例として、ある課題の評価指標が正解率だったとします。ある選手の提出したモデルの素の正解率が 85% で、ベースラインモデルの正解率が 60% だとします。運営委員会の想定解の正解率が 95% の時、それぞれの値は次のようになります:
- Min_Score - 60%
- SC_Solution - 95%
- Max_Submission - 90%(ある選手がこの得点を獲得したと想定しましょう)
- Max_Score = max(0.9 * 95%, 90%) = 90%
- Norm_Score = (85% - 60%) / (90% - 60%) × 100 = (25%) / (30%) × 100 = 83.33
したがって、この選手の正規化後の得点は 83.33 になります。
2.5 スコアボード
- 選手は、競技中に自分のモデルの提出の暫定的な得点(小課題ごとの得点と各テストケースに対する得点)を確認することかできます。
- 競技中、選手は自分の得点のみを確認することができ、暫定順位やほかの選手の得点を見ることはできません。しかし、Min_Score(ベースラインの得点)と Max_Submission(競技者の最高得点)のみ見ることができます。
- 競技中、選手以外の人はは公開されているスコアボード(順位表)を見ることができます。選手はこの順位表を見ることはできません。
- 競技終了直後から、選手は順位表を見ることができます。しかし、この順位表はあくまで暫定的な結果であり、変更される可能性があります。最終的な結果は、国際科学委員会 (ISC) による異議申し立ての対応終了後に公開されます。
2.6 隔離規則
- 翻訳セッションが開始すると同時に、競技終了まですべての選手は隔離されます。
- この隔離期間中、すべての選手は携帯電話やラップトップ、その他すべての通信機器を使用できません。規則遵守を確認するため、ボランティアが参加者に付き添います。
- 選手と他者(チームリーダーや他の選手)は競技課題について一切議論してはいけません。違反した場合、失格となることがあります。
- 選手は、各コンテストの前日の午後10時までに全ての通信機器(携帯電話やノートパソコンなど)をボランティアに渡さなければいけません。これらの機器は、すべての選手の競技終了後に返却されます。
2.7 競技中の持ち物
- 競技会場で支給されるもの
- 白いメモ用紙、筆記用具、質問用紙(参照 2.9)、軽食、水
- 競技会場に持ち込めるもの
- 筆記用具、小さなマスコット、耳栓(デジタルではない)、参加者バッジ、軽食、水
- 外付けのマウスとキーボードの持ち込みを申請することが可能です。使用を希望する場合は、練習セッション中に申し出る必要があります。なお、追加のモニターを使用することは禁止されています。
- 持ち込みが禁止されているもの
- すべての電子機器(コンピュータ、携帯電話、イヤホン、電卓、Bluetooth に接続できる通信機器など)、本、マニュアル本、データ保存が可能なメディア、その他データの保存または送信が可能な物品
- 医薬品(錠剤など)の持ち込みは認められますが、必ず練習セッションの際に申し出る必要があります。医療機器が携帯電話とのBluetooth接続を必要とする場合、その携帯電話は、競技会場内で異常時の対応について事前に指導を受けたボランティアが保管します。これ以外の対応を必要とする場合は、練習セッションの前に運営委員に申し出る必要があります。
2.8 競技開始
- 選手は、競技開始の5分前には着席している必要があります。
- 競技主催者の指示があるまでは、いかなるマシンや道具に手を触れてはいけません。
2.9 質問
- 競技中、競技用システムまたは質問用紙を通じて、運営委員に課題の詳細、ルール、採点方法について質問をすることができます。
- 運営委員会は、質問に対して「はい・いいえ」のみで回答しますが、必要に応じて追加の回答を行う場合もあります。
- 運営委員会は、質問への回答を行わない場合もあります。
- 重要かつ個別対応の範囲を超える質問に関しては、回答がすべての選手に周知されます。
2.10 競技中のサポート
- 競技中に技術的な問題(ネットワークやコンピュータのトラブル)が発生した場合、選手は色付きのカードを高く挙げることでスタッフに支援を要請することができます。
- スタッフは技術的なトラブルへの対処を行いますが、競技課題に関する一切の質問に答えることはできません。
2.11 競技終了
- 競技終了の15分、5分、1分前にアナウンスがなされます。
- 競技終了のアナウンスがあったら、すべての選手は直ちに手を止めなければいけません。席を立つ指示があるまで、席に座って待機していてください。
- 深刻な技術的問題が発生した場合、状況に応じて競技時間が追加されることがあります。
2.12 不正行為・規則違反
- 選手は、以下のいかなる不正行為も行ってはいけません。
- (不正行為の例)競技システムの改ざん、隔離期間にチームリーダーや副リーダーと連絡する、競技中に他の競技者と直接・間接的にコミュニケーションをとる、競技会場への禁止されている物品の持ち込み、テストデータへの不正アクセス
- 選手のコンピュータの画面は録画、もしくは遠隔で監視されることがあります。
- スタッフは、競技中に不正行為や規則違反があれば、選手との会話や警告の内容を記録します。競技終了後、運営委員会はこれらの記録を確認します。
- 規則違反は、失格やその他のペナルティの対象になることがあります。
2.13 異議申し立て
- 運営委員会は、選手の暫定的な結果を公式な発表より前にチームリーダーに連絡する場合があります。チームリーダーはこれらの情報を選手と共有してはいけません。
- チームリーダーは、評価に関する問題点などを異議申し立てフォームを通じて運営委員会に申し立てすることができます。
- 異議申し立てが受理されると、課題ごとの最終的な得点が変わる場合がありますが、同一の問題に対して繰り返して異議を申し立てた場合でも、点数の変更は1度しか行われません。
3. 団体戦
- 団体戦は IOAI の公式な競技の一つですが、個人戦とは異なり、選手がクリエイティブな AI に関連した課題に取り組むことを目的としています。
- 団体戦の形式は毎年異なります。IOAI2024 での団体戦(旧:実践ラウンド)では、既存の AI プラットフォームを用いて、あるブルガリア人アーティストの曲のアルバムジャケットとミュージックビデオを作りました。IOAI2025 団体戦の競技内容・形式は後日発表されます。
- 団体戦の競技中は、チームメンバー同士は同じ場所に着席し、会話することができます。
- 使用できるコンピュータの数、使用が認められるツールや Web サイトなどの詳細は団体戦の競技前に発表されます。
- 団体戦の課題は英語でのみ支給され、翻訳セッションはありません。選手は、個人戦と同じ Web 上の翻訳ツールを使用することができます。
- 団体戦の競技中、選手は競技会場外の人と連絡してはいけません。
- 団体戦で使用が許可・禁止されるものは、個人戦のものとほとんど同じです。
- 団体戦の採点方法は課題ごとに異なり、課題の説明文に明記されます。
- 団体戦で最高の成績を収めたチームには、IOAI の閉会式にてチームチャレンジ賞を授与されます。
- 団体戦の制限時間は問題によって異なりますが、数時間から1日間にわたる可能性があります。
大会規則に関して質問がある場合、IOAI 運営委員会 (isc@ioai-official.org) までメールでお問い合わせください。
この日本語訳は JOAI 委員会により作成されたものです。
本ドキュメントに関して質問がある場合は、JOAI 委員会 (japanioaistaff@gmail.com) までお問い合わせください。
更新履歴
- 2025 年 4 月 8 日:第 1 版公開